「¥JOY×プロスポーツ記者」が選ぶ極上バトル③ ガールズケイリングランプリ2017~平塚競輪場~

photo-13289
奥井迪
先行に対するブレない信念がファンの心をつかんでいる
奥井迪、涙の準V

 「ああ、神様…」。これは2017年12月28日、平塚競輪場で奥井迪(東京・106期)がレース後に放った第一声である。奥井はガールズケイリンの“先行日本一”と呼ばれ、レースっぷりはもちろんのこと、その誠実な人柄からファンのみならず関係者からも人気が高い選手。この日は1年間の激闘の末、賞金ランキング上位7名となった選手による集大成ともいえるガールズグランプリが行われた日。その奥井が検車場で涙を流した日でもある。

 私は普段記者席でレースを見ることが多いが、そのレースに限っては平塚競輪場の検車場で見ていた。最終ホームで先頭に出た奥井は軽快に飛ばしてバックを先頭で通過し、最終4コーナーも先頭で迎える。奥井がそのまま振り切るかと思われたその時、番手をキープしていた石井寛子(東京・104期)がゴール寸前で差した。その瞬間に今まで聞いたことないほどのため息が検車場内にこだました。レース後にこれだけのため息を耳にしたのは、後にも先にもこの時だけかもしれない。
 それだけに、同県の選手はもちろん、他地区の選手や、記者、関係者含めて大勢の人に奥井迪が愛されていたことが分かった瞬間だった。
 奥井は「先行でガールズグランプリを獲る!」と一切ブレないそのスタイルで周囲を魅了してきた。ラインのないガールズケイリンで先行に出るというのはとても勇気があること。私はいつの日か見たい光景がある。自らのスタイルを貫き続ける奥井がガールズグランプリを獲ること、そして嬉し涙を流す瞬間を。

本吉慶司記者

2020年5月4日 13時40分

開催情報

ページトップへ