関東大会で千メートルＴＴを勝って函館インターハイ出場の権利を得た俺は、頭の中に【全国制覇】という言葉しか浮かびませんでした。毎日放課後の部活は前橋競輪場でスタンディングの練習ばかりするようになりました。師匠の新谷隆広さんも午後になると競輪場に来て発走の時に自転車を押さえてくれました。師匠の「構えて！ヨーイ！」のかけ声は何とも言えない緊張感と気合いの入る瞬間でした。俺のスタートから半周の200メートルのタイムは良くて16秒３～５。決して速くありません。ディスクホイールを履くと16秒８～17秒くらいまで落ちてしまいます。ディスクホイールは硬く、重く、引きずっているようで、何がメリットなのか、全く分かりませんでした。あるとしたら【カッコ良さ！と周りの注目度！】ただそれだけ…。
　その当時（30年前）、まだ周りにディスクホイールを履いている人はいません。今の様にネットは普及しておらず携帯電話も無く、どこからでも情報を得られるのではなかった時代！今思えばその時にもっと工夫したり、ディスクホイールの特性等を研究すれば良かったと思います。その時の悔いが俺の競輪人生の研究心の始まりだったことは間違いありません。それでも毎日毎日、ディスクホイールを履きバンクを走る事が堪らなく興奮しました！その興奮だけで強くなっている！と当時は疑わなかった。今思うと勘違い、思い込み、がむしゃらだけで過ごしていた非常におめでたい高校２年生だったことは間違いありません（笑）。