シリーズを通して自転車の進みに具合に納得できていなかった古性優作。初日特選で対戦して肌で感じていた北井佑季の先行力に対し、勝つための手段は択ばなかった。競輪界屈指の〝テクニック〟で攻略の糸口を探った。
　「初日に（対北井との力勝負で）通用しなかったのでレースの組み立てをしっかりしないとなって。（別線の初手の位置取りが）想像つかなかったので、取ったところからいこうと思っていました」
　正攻法に構えていた北井が南関別線の深谷知広を残り２周過ぎに突っ張って出る。和田健太郎に降りられて削られた古性は冷静に６番手に追い上げて瞬時に態勢を整え、北井が絶妙に流していた隙を逃さなかった。車間を空けることもなく、気配を殺してノーモーションで、カマシとも、追い上げとも取れる奇襲策に出た。
　「北井さんのダッシュがすごかったですし、そこ（番手）に降りる感じになりました。（北井のカカリは）強烈でしたね」
　和田真久留を一発で仕留めて北井の番手を奪い取ると、最終１センターからまくってきた松本を引き付けながら２センターから力いっぱい踏み込んだ。
　「（松本が）見えたので踏みました。（感触自体は）準決と同じところが気になったんですけど。感覚的なものですね。（優勝したかは）全然わからなかったですね。後ろからもすごい音が聞こえてきていたので、食われるかなっていう感じでした」
　今年１月の和歌山記念以来となる通算10度目のＧ３制覇を達成となったが、満足はしていない。今回対戦した北井や深谷だけではなく、周りのレベルが上がってきていることに危機感をあらわにする。
　「去年の後半からずっとですね。周りが強くなってきて、自分だけその場で足踏みをしている感じっていうんですか。なんかこう、自分だけ埋もれていってしまっているなって感覚がありますね」
　昨年はＧ１三冠の偉業を達成し、ＭＶＰにも輝いているが、さらなる強さを求めてタテ脚強化を最大のテーマに掲げている。
　「レースを見てもらってわかるように、自力で戦えないなりの組み立てをしました。力で勝てるのがベストですけど。昔は逆にそれ（自在な動き）しかできなかったんですけど、そのときよりはタテにゆとりはでてきた。自力で勝負したいですけど、厳しいこともでてくるので。対戦相手と客観的に〝古性優作〟とを考えて組み立てていきたい。早く帰って練習したいです」
　10日後には取手で行われるウィナーズカップが控えている。一日も無駄にすることなく調整を行い、２年前に全日本選抜競輪を制した相性良い舞台で大暴れする。

　北井佑季は神奈川ライン３車の厚みを生かして突っ張り先行で優勝を狙ったが、古性に番手を奪われる苦しい展開となり、ゴール前で追い込まれての準Ｖ。初日特選から迫力満点の走りで存在感を示していたが、シリーズを通して勝利を手にすることはできなかった。
　「小原さんはスタートが速いので前からでした。前を取るのことを頑張ってもらって、取れた位置からいこうと。相手がくるところを見ながら突っ張って、（そのあとは）出てくる敵を見ながらで、結果的にあのレースになりました。古性さんが見えて、合わせられるように見ながら踏んで、カマシにくるような出方ではなかったのでペースに入れ直した。（古性が）うまかったですね。ペースとしてはスコンってまくられなかったから良かったけど、最後にいかれてしまっている。古性さんは強いけど、（自分が）どんな走りをしても２着は２着なので。古性さんが強かった。全部が全部、突っ張りでもなくてできないときもあるので。今回のメンバー、並びを考えたときに今日の走りが優勝に近いと感じたので。今回は１着を１回も取れていない。どんないい走りをしてもタイトル獲るには１着じゃないと。２着じゃダメなので。押し切れるように力を付け直したい」

　３連勝で勝ち上がっていた地元の松本貴治は北井の突っ張り先行を想定して１番車を生かして前中団を選択。途中までは思惑通りにレースを進めることができたが、いい位置を取れ過ぎたため古性よりも先に動くことはできなかった。前団のもつれをみながら最終１センターから力いっぱいまくり上げるも３着まで。
　「神奈川勢が前ならその後ろから始めようと。ほぼほぼ、番手が（同県の）和田真さんだったので北井さんは突っ張るかなとみていました。いいポジションだっただけにまだ仕掛けられないなと。（古性が仕掛けた）あそこから仕掛けて今の自分には持つ力もないし、窺いながらになって古性さんに先に仕掛けられた。古性さんの動きをできれば良かったんですけど。そこからは仕掛けてどこまでいけるかなと。４日目だったけど、感覚は良くて根本的に力不足。何とか確定板に入れましたけど。地元はどのレースでも優勝したい。また頑張ります。今開催は北井さんの後ろを走って色々と貴重な経験ができたし、その経験をいかしてもうひとつ成長できれば」