1年半ぶりのG1制覇で初のダービー王
古性優作
通算9回目のG1制覇。何度も経験している表彰式、それでも古性優作は、あふれる涙が止まらなかった。
「みんな、毎日、死に物狂いで練習してきた選手ばっかりだと思う。そのなかで(決勝を)走れて、幸せだなって走る前には思っていました」
自身を含め3人のS級S班をはじめ、輪界日本一を決めるにふさわしい9人が決勝に顔をそろえた。ただ、近畿勢は一人だけ。一次予選では近畿勢が誰ひとり勝ち上がれず、準決でラインを組んだ寺崎浩平、山田久徳も敗退。脇本雄太不在の日本選手権で、古性が背負うものは少なくはなかった。
「近畿勢の流れが良くなくて、僕の力で少しでも流れをって思ったんですけど。なかなか流れを変えられず、最後は1人になってしまった。関東勢の勢いがすごかったんですが、なんとか僕1人の力でも勝ちたいと。(勝てて)良かったです」
平塚に詰めかけた約1万3000人のファンの前で、古性がこう言って涙をぬぐった。
佐々木悠葵が先頭を務めて、吉田拓矢、眞杉匠のSSコンビが固める関東勢を中心にレースが動いた。赤板1コーナーで飛び出した佐々木が緩めることなく踏んでいき、吉田、眞杉の追走。取鳥雄吾が4番手に飛び付き、追い上げた古性は松浦悠士の後ろの荒井崇博が遅れたスペースを確保して打鐘を通過した。
「赤板は佐々木君が上手やった。(自分の)判断が悪かったし、難しかったです」
最終ホームから取鳥が巻き返すと、古性は空いたインに俊敏に進路を取り押し上げる。2コーナー手前で眞杉の内に並んで一撃でさばいて、番手まくりの吉田に乗っていった。
「(最終)ホームから内に行った判断も想定外というか、もう吸い込まれるように行きました。あそこを狙っていったわけではないですね。ああなったら外行くしかないなっていう感じだったんですけど。今回に限りですかね」
外を仕掛けることは、常にベースにあるからこその、瞬時のジャッジメント。自身にも言い聞かせるように付け加えた。
「こんだけメンバーが強かったら、(優勝は)確率論みたいになってくるところもある。本当に力を出し切って負けたら、その時はまた練習するしかないなと。そういう心構えで発走機には立った。最初からああいうレースをしようと思って発走機に立ったら、優勝は絶対にできていないと思います。結果そうやって外を踏むっていう気持ちがあったから、ああいう判断にもなったんだと」
自力に転じた吉田後位を奪取した古性に絶好も、後ろには立て直した眞杉がいて直線を迎える。内の吉田をとらえて、外の眞杉を退けた古性が先頭でゴール。9度目のG1制覇は、初めての日本選手権優勝だった。
「日本一になるために、毎日すべて捧げてきましたし。(優勝は)本当にうれしいですね。去年の1年間、本当に不甲斐なかった。去年は納得のいくレースが1つもなかった。選手を続けていてもおもしろくないなっていうのがあって、心も折れそうだったけど、やってきて良かったって思います」
昨年7月のサマーナイトフェスティバルで落車の憂き目。肩鎖関節の脱きゅうとじん帯の断裂。右肩が思うようにならないなかで、昨年のビッグ制覇はウィナーズカップだけに終わっていた。ダブルグランプリスラムを掲げる古性にとっては、日本選手権は日本一という称号だけではなく目標への大切なピースになる。
「(近畿勢の)層が薄いなかで、どんだけ自分が踏ん張れるかだと。とにかく自分はしっかり一個人として成長できるように。あとはこう近畿の層がどんどん厚くなって盛り上がっていけば。決勝は1人じゃなくて、去年の全日本選抜みたいに6人乗れたりとか。そうやって別線になるくらい、幸せな悩みが増えたら一番うれしいなって思います」
2月の全日本選抜を脇本が制して、その流れを受け継ぐように古性が日本選手権V。古性がいるかぎり、近畿の流れがとどまることはない。
佐々木がハイペースで駆けて、吉田拓矢は最終2コーナー手前で番手まくりを打った。
「佐々木君がうまかった。取鳥さんに突っ張られないように、行ってくれた。ダッシュがすごくて、(車間が)空いてしまってもったいなかったですね。あそこで消耗したかなと。(古性の動きは)見えていないです。眞杉に申し訳なかったです。タテに踏むだけだったのに、行くのが早いと思って…。眞杉が3番手を回ってくれた意味がない」
古性に吉田後位を奪われた眞杉匠は、古性に続く荒井を阻んで立て直す。直線で外を追い込むも3着まで。
「(脚的には)大丈夫でした。本当は付いていかないとダメですけど…。(最終)2角でフワッとしてしまって、内を空けてしまった。締めておかないといけなかった。古性さんが外からなら対応できたと思いますし、すごいっすね。一瞬の…。(古性は)脚を使ってあの位置まで追い上げて来たと。対処できずダメでした。あれだけ(佐々木が)行ってくれたのに、関東で誰も獲れていない。あそこで空けなければ、(吉田と自分の)どっちか(優勝で)ワンツーだったかなと」