5度目のG3Vが地元記念初制覇
山口拳矢
絵になる男が、責務を果たし、地元では初めての記念を制した。
「(優勝できたのは)決勝まで上げてくれた先輩と後輩のおかげだし、その気持ちに応えられて良かった」
地元からはただ一人、初日特選スタート。二次予選、準決では前後を仲間が固める強固な地元ラインの番手で決勝に進出。こう言って周囲に感謝した山口拳矢が、地元記念の重みをかみ締める。
「(21年に岐阜の共同通信社杯でビッグ初制覇を遂げた)あの時は、良くも悪くもグレードレースの価値をわかっていなかった。いまの方が地元の重みを感じるし、うれしいです」
レースが、すべて思惑通りに運んだわけではなかった。記念初優出の齋木翔多が、3番手から猿樂楓樹に合わせて動いて中国勢の後位をキープ。前受けの山口は、5番手で打鐘を迎えた。
「(齋木の)先切りは考えてなかったんで、反応が遅れました。ただ、(猿樂が)思ったよりも踏んできた。僕には、それがありがたかった」
7番手の山崎賢人が反撃に出て、抵抗する猿樂を最終2コーナー手前でとらえる。しかしながら、山田英明が山崎のダッシュに遅れ気味。松浦悠士が山崎後位にスイッチしたが、山田が意地で追い上げる。そこを逃さず山口が、踏み込んだ。
「(まくった)タイミングも良かったですね。(9番手から仕掛けた)脇本(雄太)さんと(踏み出しが)一緒だった」
山田をさばいた松浦が踏み出した時には、山口はすでにスピードに乗り、
その違いは明らか。2着以下をちぎって、山口がゴールを駆け抜けた。
「松浦さんの横をすんなり通れたのが大きかった。直線に入ってからは優勝かなと。(脚も)うまく回った感じです」
地元のエースとして、ギリギリまで模索した。選手紹介が終わってから、ミリ単位のセッティング調整が功を奏した。
「顔見せのあと、直前に(セッティングを)変えた。1ミリくらいですけどね。この4日間で、一番感じが良かったです」
21年に初めてビッグを制した岐阜で、通算5回目のG3優勝。賞金を上積みして、獲得賞金争いでのグランプリ出場も視野に入ってきた。
「(獲得賞金ランクは)これで10位くらいなんですかね。結局、G1で決まるんで、そこで決められるように。(次の寬仁親王牌は)理事長杯スタートなんで」
これ以上ないステップで迎える弥彦での大舞台の初日は、最も有利な理事長杯から。地元ファンの期待を背負い、3年ぶりのタイトル奪取にまい進する。
シリーズ3度目の連係となった猿樂が、山崎との力勝負に敗れると、松浦悠士が切り替える。が、山田をさばいているところに山口のまくりが飛んで来て、2着が精いっぱい。
「猿樂君も自分のスタイルがあるし、ペースとか(仕掛けて)行くタイミングとかは任せていました。(猿樂は先行態勢に入ったあと)1回、落ち着いても良かったかもしれないけど、それは次の課題ですね。あそこからのペースではもたない。でも、(山崎)賢人君も(猿樂に)並んでいっぱいの感じだった。そこは猿樂君の強さを見せられたんじゃないかと。(猿樂を)迎え入れるか、(山崎に)切り替えるかだったんですけど、ヒデさん(山田)が来たんで切り替えました。(山口のまくりに)気づいた時にはもう遅かった。今日(最終日)が、一番感触が良かった。手応えはありました」
記念初優出ながらもソツのない立ち回りが光った齋木翔多は、3着をこう振り返った。
「猿樂君よりも先に出てっていう感じでした。先に切って、3番手をしっかりと取れた。ただ、3番手を取るだけのレースになってしまった。位置取りをしっかりとしたあと自力を出すっていうのが課題ですね。3番(山崎)の後ろにすぐにスイッチしていれば良かったけど、(最終ホームの)ここで落ち着いてしまった。結果的には位置を取ってない人(山口)が優勝したし、自分としてはいまの脚と車番でやれることはやった」