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2020年5月19日 12時14分

「¥JOY×プロスポーツ記者が選ぶ」極上バトル⑨ ~KEIRINグランプリ2019~

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佐藤慎太郎
話術と技術で魅せる輪界のエンターテイナー
佐藤慎太郎“前にも見た景色が見えた”

 誰が今の競輪で一番強いのか? 競輪未経験者の知り合いにそう質問された時に、展開やライン戦を無視するならば脚力で脇本雄太(福井・94期)と自分なら答える。2019年のダービー完全優勝は衝撃的なものだったし、ワールドカップの金メダルや世界選手権の準優勝など、もはや日本のみならず世界のトップ選手として君臨している。脇本選手がここまで強くなったのは本人の素質もさることながら、ナショナルチームに加わり厳しい練習に耐え抜いていることは容易に想像がつく。そういう意味でも今の競輪界において「ナショナルチーム」の存在は大きい。新田祐大(福島・90期)や深谷知広(愛知・96期)、若手有望株の松井宏佑(神奈川・113期)や高橋晋也(福島・115期)などそうそうたるメンバーが在籍しており、今のスピードケイリン化は紛れもなく彼らの存在が大きい。

 2019年12月30日に開催された立川グランプリ。ナショナルチームの脇本と新田に人気が集まり、両者は別線ながら2車単の裏表で1番、2番人気を占めていた。ファンの心中にも両者の脚力がどんな展開でも買いに値するとの見解だったと思われる。自身の車券も脇本の頭で手広く買っていた。当日の立川競輪場には約1万2千人が訪れ、ファンの異様な熱気に包まれていた。私自身、1コーナーのスタンドでレースを見ていたが前に立ちはだかる群衆で勝負所は1センターのモニターでレースの行方を見守っていた。

 レースは打鐘からカマしに出た脇本の後位に新田が飛び付く。どんどんと加速する脇本の先行に別線のまくりは止まっているように感じる。最終3コーナー過ぎから新田が踏むが脇本の強靭な踏み直しに車は出ない。ゴール前、脇本が逃げ切るかに思われたが、中のコースを青色の選手が割って出た。一瞬、誰か分からなかったが、新田マークだった佐藤慎太郎(福島・78期)である。長らく北日本勢を牽引する名マーカーだが、正直優勝は厳しいと思っていた。展開的にも新田はまくりに構えると思っていたし、位置的にも遠い印象は拭えなかった。

 車券は外れたが、正直な感想を言うと驚きや嬉しい気持ちの方が優っていた。神格化していたナショナルチームの脚力、スピードを競輪の技が打ち破ったという感覚だった。そして、43歳で新たな”キング“となった佐藤は、レース後のインタビューにおいて、最後の直線を迎えたときの心境を問われると、「今年はこの(レース)パターンが多くて、今回もこの展開かと一瞬閃いた。前にも見た景色というか初めての感じじゃないなと」と答えていたが、グランプリという究極の舞台においても、レースの経験値や追い込み選手のセンス、技術が全てを凌駕できることに競輪の奥深さを感じずにはいられなかった。

及位然斗 記者

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