• 岸和田競輪場 第76回高松宮記念杯競輪・第3回パールカップ6/17〜6/22

後記 GⅠ 岸和田 06/17 ガールズ パールカップ

全冠制覇に王手の完全V

佐藤水菜

佐藤水菜

決勝優勝写真
決勝優勝写真
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 役者の違いをまざまざと見せつけた3日間だった。前回、4月のオールガールズクラシックでは準決の2着で土がついたが、今シリーズはパーフェクト優勝の3連勝でファンの期待に応えた。
 「自分の思うようなレースができて、すごく有意義な3日間でした」
 笑みを浮かべながら佐藤水菜が、いつものようにさらりと振り返った。
 レースは併走していた竹野百香を赤板で前に入れて、4番手で打鐘を迎える。2番手にはナショナルチームのチームメイト、仲澤春香が前との車間を空けて佐藤を警戒。それでも佐藤に迷いはなかった。自身の力を信じて、4コーナーで外に持ち出して前団に襲い掛かった。
 「もう残り1周になる前には、誰かしら動きたいタイミングはわかっていた。そこで自分が一番最初に駆けようと思っていました」
 仲澤の横を通過した佐藤は、先頭の奥井迪をスピードの違いでとらえて、そのまま加速。最終2コーナーでは後ろに付けていた尾崎睦を置き去りにしたが、今度は梅川風子がまくってきた。
 「(前の3人をとらえた感触は)モガき合いにならないように、自分がゴールで優勝できるように考えて走りました」
 断然の脚力をもちながらも、佐藤はあくまで冷静だった。梅川のまくりを合わせて、佐藤との間合いを詰めた尾崎を直線で寄せつけることなくゴールを駆け抜けた。
 「(自分にとっては)一番嫌なゴール前勝負になってしまった。もう座るところがないサドルで、今世紀最大の力で踏み込みました(笑)。ずっと踏んでいるんですけど、さらに気合いで踏み込みました。雑巾のように脚を絞って、絞りました」
 完勝のロングまくりも、「ヒリヒリのハラハラだった」と、場内の優勝インタビューで応えたように、佐藤に余裕はなかった。
 「(競技用の自転車との違い)一生懸命工夫していろいろやってみたんですけど、理想のフォームにはいまの自転車にはなかなかならなかった。練習でも仲澤さんに負けて、危機感をもってここに入ってきた」
 昨年11月の競輪祭女子王座戦、今年4月のオールガールズクラシックに続いてG1を3連覇。それでも自身の理想はまだ先にある。
 「心残りなのは1周半、駆けたかった。自分のタイミングで行ったんですけど、こういうタイトルレースで長い距離を踏んでいかないとっていうのがある。もう1段階ステップアップするために、必要だと感じている」
 すでにグランプリを獲っている佐藤は、8月の女子オールスターを優勝すれば、G1の4冠とグランプリの完全制覇、グランプリスラムを達成する。
 「(女子オールスターでグランプリスラムのかかるが)そうなんです、頑張って獲ります。でも、500バンクなんで難しいけど頑張ります。どんなレースでも、どんな勝ち上がりでもやることは1つ。勝つことだけなので、1着だけを狙って、自分のレースをして勝ちたいです」
 敵なしの“絶対女王”にとって最大のライバルは、自分自身なのだろう。

 周回中から佐藤の後ろにいた尾崎睦は、奥井を越える最終2コーナー手前で置いていかれる。それでも梅川のまくりに合わせて、佐藤との距離を詰めた。
 「(佐藤の後ろが)優勝に一番近い位置だと腹をくくって追走に集中していた。梅川さんも強いけど、余裕はなかったので、サトミナ(佐藤)だけを見ていました。梅川さんが仕掛けてきた時に、(佐藤と)車間が空いて入られないようにしてキツかった。(最終)3コーナーで吸い込まれて夢を見たけど、(佐藤は)流していたんですね。踏み直しがすごかったです」

 竹野百香は、最終バックで最後方に近いポジション。2センターからは内を踏んで3着に入った。
 「緊張しすぎて覚えていないんですけど。見せ場がなくて、最後に空いたところをすくうだけになってしまった。(周回中は)佐藤さんよりも前にいないとって、そこは気持ちを強くもった。けど、ずっと人の後ろで、なにもできなかったです。脚が余ってゴールをしたので、悔しかったですね。結果だけではない大事なこともある」

Race Playback

レース展開4
 佐藤水菜選手がロングまくりで押し切りV。佐藤選手に続いた尾崎睦選手が2着。3着に竹野百香選手。

レース経過

誘導員 : 水谷好宏

 号砲で大外枠から奥井迪が出る。奥井、仲澤春香、佐藤水菜、尾崎睦、梅川風子、柳原真緒となるが、竹野百香が位置を求めて佐藤の外で並走。赤板で佐藤が下げて竹野は3番手に入る。 引くと同時に佐藤は前との車間を空け始め、仲澤も奥井との車間を大きく空けていく。打鐘で誘導が退避しても、タテ長の隊列は変わらないままで最終ホーム入り口が奥井が腹をくくってスパート。だが、佐藤の反撃も早かった。ほぼ同時に踏み上げて、あっという間に仲澤を交わすと、後続を引き離して逃げていた奥井を追って1センターで捕らえる。初手から後ろにいた尾崎が奥井を乗り越えるのに口が空きかけながらも懸命に佐藤を追い、仲澤も3番手に切り替えたが、その外には1センターからまくり上げてきた梅川が並び掛けてくる。そのまま直線に入り、最後まで力強く踏み切った佐藤がV。尾崎がそのまま2着に流れ込む。梅川と、その外を踏んだ仲澤は伸び切れず、仲澤後位から直線で最内のコースに突っ込んだ竹野が3着に入った。

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