地元でうれしい記念初制覇
末木浩二
前回の高松宮記念杯では、デビュー9年にしてG1初のファイナルをつかんだ。今シリーズの前検日には、「(高松宮記念杯は)開催を通して、すごい不思議なくらいうまくかみ合った。こんなことはもうないんじゃないかっていう感じだった」と、振り返っていたが、その流れを止めることなく“確変モード”でG3初優勝を地元で果たした。
「(今シリーズは)新潟支部エースの諸橋(愛)さんが欠場になってしまった。まずは誰かしら決勝には乗れるようにって。みんなで前検日に話し合った。結果、地元から優勝者を出せたので良かったです」
弥彦記念3連覇の実績を持つ諸橋が直前で欠場を余儀なくされ、直近の弥彦記念を連覇している平原康多は現役にピリオドを打った。それだけに結束力を高めて臨むことは、関東勢にとって必然だった。一次予選、準決は佐々木悠葵、二次予選は菊池岳仁と末木浩二はシリーズの4走すべてが番手回り。「最近は自分の力というよりは、ラインのおかげですね」と、仲間たちには、感謝してもしきれない。
レースは打鐘で石原颯が主導権を握るが、コースを塞がれた松浦悠士が石原を追い切れない。坂井洋は瞬時に反応して、石原の番手を確保。末木、武藤龍生が続いた。
「坂井君が器用に、臨機応変に立ち回ってくれました。(坂井が石原の)番手にハマったので、どうするんだろうって思っていた。そしたら(坂井が)タテに踏んでいってくれたので、優勝できたと思います」
一撃にかけた単騎の新山響平が、打鐘4コーナーから襲い掛かる。坂井は新山を張りながら、最終2コーナー手前から番手まくりに出る。関東勢での勝負かに思われたのもつかの間、直線でS級S班の2人が迫ってきた。が、迷うことなく踏み込んでいた末木が、僅差で松浦、脇本雄太を退けた。
「(優勝は)まだ自分でも信じられないです。(番手を回るレースが増えてきて)すごくいい経験をさせてもらっています。少しずつ成長できているのかなって思います」
弥彦の杜に映えるアースカラーの緑の6番車。絵になる表彰式で、末木がニヤリと笑った。
先行策に出た石原との連結が外れた松浦悠士は、やむを得ず脇本の後ろで三谷竜生と併走。脇本の番手を踏み勝って、直線はさすがのコース取りも反省しきり。
「(石原は脇本を出させて)あの感じで引くんだと思っていました。浅井(康太)さんのところも引いて、カマしていくっていうイメージだった。あれだと浅井さんに先に当たらないといけないので難しいですね。自分も踏み込んでいたんで、あそこからは引けなかった。脇本さんをしゃくっていきたかったんですけど、ずっと締めていた。状態は良かったですけど、レースとしてはダメですね」
赤板過ぎに切って出た脇本雄太は、状況把握が遅れて6番手。そこからまくり追い込みで差を詰めたものの3着。
「(後ろ攻めは)覚悟の上でした。ただ、石原君の後ろが松浦君じゃないってことを察知するのが遅れました。敗因はそこですね」