不撓不屈・ボスの自転車人生

不撓不屈・ボスの自転車人生

後閑 信一 後閑 信一 ごかん しんいち 元競輪選手  平成2年4月に65期生としてデビュー。落車による大ケガや数々の困難を不撓不屈の精神で克服。第46回競輪祭、第15回寛仁親王牌、第56回オールスターとG1で3V。面倒見いい親分肌と風貌から〝ボス″と称された。平成30年1月引退。通算成績は2158戦551勝、2着311回、3着255回。

第78回 生活レベルが一気に下がる  2019年10月18日

 問題の2次予選がスタートしました。メンバー構成的には私と地元・坂本勉選手の2分戦となりました。お互いにどちらかと言うと、押さえ先行よりはカマシやまくりが得意技でしたので、お互い牽制からのスタートでした。すると痺れを切らせた単騎戦の神奈川県・郡司盛夫選手(郡司浩平選手のお父さん)が先頭誘導員を追いかけました。そして車間が空いて残りの8名が発走機からゆっくり出たのを覚えています。坂本勉選手(坂本貴史選手のお父さん)といえばロサンゼルスオリンピック・スプリント競技で日本人初となる銅メダリスト!私は胸をお借りする気持ちでいたのですが、勝ちたい!という気持ちから終始牽制をしながらお互いに走っていた様に思います。レースは結局、坂本勉選手のレーステクニックにコントロールされてしまい、私はその雰囲気に完全に飲み込まれてしまいました。レースは完全に敗退です。あっさりと勝負をつけられてしまいました。
 しかし、ゴールをした瞬間に「何か変だ?」と感じたのです。それはお客様の地鳴りのようなザワつきです。ゴール直後、前を見ると郡司盛夫選手がガッツポーズをしていました。1着の郡司盛夫選手から大きく遅れてゴールをした残り8人の私達は、以降欠場となり青森競輪場を後にしました。帰りの電車の中では、時間が経つにつれて事の重大さを感じました。当分の間、まずは2ケ月の自粛欠場となり反省の日々を過ごす事になったのですが、開催前に購入したホンダNSXの納車をすっかり忘れていました。次はいつ走れるか分からない不安の中での納車は、正に泣きっ面に蜂という心境でした。
 まだ長女百合亜が2歳になろうという時でしたので、1億円越えの新築住宅と新車のメルセデスS600にホンダNSX所有の生活は本当にきつかった!生活レベルが一気に下がり、毎日スーパーで値引き商品や安いものを優先して購入する様になり、タ方18時を過ぎた頃に値引きのシールが貼られる事も学びました。毎日ヤクルトを飲んでいた百合亜にも買ってあげられない日がきたのです。でも脚力は落とせないので練習は毎日やります。そうすると当然お腹も減ります。私は悩み思い付いたのがCoCo壱のカレーの大食い「20分以内に1300g食べられたら料金は無料!」です。私は必死に食らいつきました。だって食べられなかったら、その分の料金は払わなければならないので、そんな事になったら家には帰れません。頑張った結果、無事に完食!それからは食べるコツを掴み、あちこち食べに行きました。完食した人は入り口に写真が貼られます。当然私も貼られていたのを懐かしく思います(笑)。結局、制裁は自粛欠場を2ケ月と斡旋停止4ケ月が決定して、更にこの後も私の不運な日々が迫る事になるのです。

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