2度目のG3もまた富山
飯野祐太
不惑を迎えた飯野祐太が、またしても富山でチャンスをモノにした。22年11月の当所でのG3初制覇が38歳。08年にヤンググランプリを制してからグレード戦線では期待されながらも、“無欲”の走りで北日本勢を引っ張ってきた。その経験を糧につかんだ優勝には、自然と笑顔があふれてくる。
「今回はメンバー的にも、(優勝は)厳しいかなって思ったんですけど。競輪はラインだと思うし、今日(最終日)は本当にラインに助けられました」
北日本勢が大挙、勝ち上がった決勝は、嵯峨昇喜郎を先頭に4車で結束。中部、近畿がそれぞれ2車のラインで、関東勢は柿澤大貴が単騎。数的有利を生かして、嵯峨がレースを支配。赤板手前からグングンと風を切り、佐藤一伸、飯野、須永優太の福島トリオが抜かりなく続いた。
「嵯峨君が赤板から駆けて行ってくれたので、ラインで決めることができました。昨日とコンディションが違った。(バンクが)終始、重い感じだった。(佐藤)一伸もいっぱいそうだったし、自分も余裕はあったんですけど脚にきていました。でも、後ろ(になったほかのライン)はもっと脚にきていたのかと」
8番手に置かれた地元の村田祐樹が2コーナーから反撃に出て、合わせるように5番手の谷和也が仕掛ける。最終1コーナーで佐藤が谷を張ると、そのあおりで村田も大きく外に膨れる。佐藤は迷うことなく、その勢いで番手発進。そこで大勢が決まり、佐藤と飯野にV争いは絞られた。
「(谷が)来た時に(佐藤が)一度、振ってから出ていく形だった。それが結構、いいブロックというか、それでほぼみんな止まった。あとは村田君が来ていたんですけど、自分はムダな動きをしないでと。全体的に(周りが)見えていたので、おそらく乗り越えてはこないだろうなっていうスピードだった」
終わってみれば福島の3人で上位を独占。外から佐藤を差し切って優勝の飯野が、こう振り返って笑った。
「(直線で)一伸がもってきたので、内に行かれちゃうよって(笑)。須永と岡崎(智哉)も来ていたんで」
“幸せ配達人”だけで終わることなく2度目のG3制覇。少しの欲は出てきたが、この先もライン、仲間を思いやるスタイルは変わらない。
「35歳くらいから本当に自分も獲りたいなっていうのが、急に出てきた。それでまた今回、獲れた。(嵯峨)昇喜郎が覚悟をもって先行してくれた。それでワンツースリーが決まった。競輪は40歳から、こっからですね(笑)」
単騎だった初日特選を除いては連日、重責の番手回りだった佐藤一伸。番手まくりで嵯峨の意気に応えた。
「嵯峨君が頑張ってくれた。でも、あれで勝てないならG3は優勝できないなって…。(嵯峨は)赤板から踏み込んでいってくれた。ちょっと早いかなって思ったんですけど、気持ちがうれしかった。(最終)ホームで谷君が来たのが見えて振ったんですけど、振った時に嵯峨君がタレて来ている感じだった。それでバックを踏むよりはと思って、出ていきました。ちょっと夢をみたんですけどね」
北日本ライン4番手の須永優太は、岡崎に詰め寄られながらも3着をキープした。
「赤板で(嵯峨が)踏んでいった時に口が空いてキツかったですね。(最終)ホームで(別線が)来ていたんですけど、柿澤君もいたので内を空けられないし気をつけていました。ラインのおかげですね。最後は岡崎さんも来ていたんで良かったです」