デビューから１６年でつかんだ初めてのＧ３優勝。塚本大樹は、「長かったっすね」と、照れくさそうに喜んだ。
　スタートを取ったのは、９番車の阿部将大。大きな一手がスタートで決まり、残り２周半から突っ張り先行に出た九州勢が、終始レースを支配した。単騎の松坂洋平が地元の意地を見せ、最終ホームからインを進出すると、阿部と間合いを取っていた宮本隼輔は、２コーナーで内を締め込んで対応。宮本は、阿部の思いを無駄にすることなく、車間を詰めて番手まくりに出た。
　「前が取れたら、基本、誰も出させないと思ってました。アベマサ（阿部将大）の先行一車だし、突っ張った方が楽だろうと。そのまま駆けてくれたんで、後は（宮本）隼輔が仕事するだけだった。追走しているぶんには、楽でした」
　宮本が番手から出たのは最終バック過ぎ。決して楽に交わせる仕掛けではなかった。４分の１輪差で制した際どいゴール勝負を、こう振り返る。
　「よく差せたっすよね（笑）。抜けそうだなっていう感覚はあったんですけど、抜いたかどうかは分からなかった。（ゴール前は）精一杯ハンドルを投げただけでした。（開催中にセッティングを修正して）それが間違いなく良かった。昨日（３日目）はちょっとハンドルを上げ過ぎた。それを微調整して、今日は完全にセッティングが出ていました」
　この優勝で、来年地元で開催される全日本選抜への出場を、ほぼ確実なものとした。寬
仁親王牌では、同県の嘉永泰斗がＧ１を初制覇。熊本勢には、大きな流れが来ている。
　「（嘉永のＧ１優勝は）嬉しいし、自分にとっても刺激になっている。その後ろを、しっかり回れるように。（全日本選抜は）地元で暴れたい。自分は大きい大会になるとケガをすることが多い。そうならないように気を付けて、今の良い調子のまま行きたいですね」
　地元Ｇ１を大きなモチベーションにして、一つの結果をここで出した。大暴れを誓った塚本が、大一番に向けてさらに調子を上げていく。

　番手まくりの宮本隼輔が２着。阿部の気迫を無駄にせず、塚本との九州ワンツーだった。
　「アベマサ（阿部将大）がやる気でしたね。アベマサとゴール前勝負が良かったけど、内を空けすぎて松坂さんに来られてしまったので、慌てて出てしまった。（塚本とゴール前勝負できたのは）良かった。（今シリーズは）連日、前のおかげですね」

　スタートで中団を取ったのは関東勢。一戸康宏に乗った岡本大嗣は、最終２センターで内のコースを踏んで３着だった。
　「（初手で）中団は考えてなかったけど、タイミング的に取れそうだったので。これは前（九州勢）が突っ張ってくれたら、一戸君もまくりでチャンスがあるなと。（松坂の追い上げもあったが一戸は）連日、引いていなかったので。あとは、詰まった所を松坂君に内から行かれてしまった。最後は思った以上にスピードが出てしまって、一戸君に当たる感じになってしまい申し訳なかった。前回（豊橋Ｇ３）は決勝を目標にしていて、今回は決勝で確定板を目標にしてたら、それができてしまった。新しい目標をたてないと」