逃走劇を完結させて年間グランドスラム
佐藤水菜
「うれしくないと言ったらおかしな話ですけど、自分としてはみんな無事に完走して戦いたかった。なんかめちゃくちゃ悔しいです」
4人が落車するアクシデント。オールガールズクラシック、パールカップ、女子オールスター、そして今年のラストG1、女子王座戦。今年の4つのG1を総ナメにして、年間グランドスラムを達成した佐藤水菜ではあったが、まずはともに決勝の舞台で戦った仲間を気づかった。
新車を投入した今シリーズ。決して自身が満足のいく感覚があったわけではなかった。直前までほんの少しの上積み、一体感を求めて、新たな“相棒”に向き合った。
「ウォーミングアップの途中にまだやれることがあるなと。自信をもって悔いなく走れるっていう自転車の状態をつくって走れました。初めての自転車だったので、初日は自分の状態も悪いですし、初日の感覚より、昨日(2日目)の感覚の方が大事だと思った。それで昨日の結果を経て修正しました」
レースでは赤板を6番手で迎えた。佐藤と同じく連勝で勝ち上がった4番手の梅川風子にプレッシャーをかけるように、2コーナーから動いた。その梅川が仕掛けないと見るや、打鐘2センターからスパート。同じナショナルチームの仲澤春香を最終1センターでとらえて先行策。世界の脚力でピッチを刻んだ。2番手に飛び付いた仲澤が詰めて、3コーナー過ぎに佐藤の後輪に接触。落車のアクシデントが起こった。
「(最終)2センターの一番大事な勝負どころで接触があった。落車があって、そこで力が抜けてしまった。自転車の感覚を確かめることはできなかったです。すぐに(頭を)切り替えて、ゴールまで走りきらなきゃっていう風に気持ちが切り変わった。気持ちの切り替えの早いところは、自分の最大の特長だと思っていたので、切り替えられて良かった」
アクシデントで揺らいだ気持ちを立て直してゴールまで集中。梅川の強襲を退けて、今年の4冠すべてを制した。
「3年前に地元(平塚)のグランプリに挑んで落車して悔しい思いをした。その平塚でまた(グランプリを)走れることはすごくうれしい。今度は優勝できるように」
4冠制覇のその先に、まだ見ぬ年間グランプリスラムのさらなる偉業。世界選手権のケイリンを連覇した佐藤にとっては、それも通過点なのかもしれない。
最終バックの手前では6、7番手に置かれた梅川風子は、その時点で佐藤は遥かに前。落車のアクシデントを内に避けると、直線で猛襲したが4分の1輪差まで。
「佐藤選手を後方に置いてと思っていました。佐藤選手が駆ける瞬間に反応が悪かったし、遅れてしまったので良くなかったです。全然ダメ。転んだ選手もいるし、なにも内容のない2着です。年末(ガールズグランプリ)に向けてしっかりとやっていきたいです。今日のレースは反省しかないし、よく見直して修正点を洗い出して二度とこういうことがないようにしたい」
最終3コーナー過ぎに前の2人が落車した那須萌美は、ほんの一瞬のできごとをこう振り返った。
「正直、落車があってから、コケると思っていました。気づいたらゴールでわからないです。(レースは)誰かの番手と思ったら、昨日(2日目)の自分みたいにされてしまう。後悔がないようにと。(今年を振り返り)気持ちが切れた時もあったが、なんとかたえることができました」