PIST6開幕から4カ月を振り返る ~TIPSTAR DOME CHIBA~

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雨谷一樹
世界と日本の違いについて教えてくれた
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場内のファンへ笑顔でパフォーマンスを披露
現場の願いは“業界一丸”

 PIST6が昨年10月に開幕して、早4カ月が経とうとしている。筆者は誰よりもPIST6を見ていると自負しており、また取材をしていると、関係者や選手、団体などの様々な声が聞こえてくる。

 そこで今一度、PIST6の現状を整理してみる。最近の売り上げは毎開催2日間合計でおおよそ2000万円前後。入場人員は発表こそされていないが、見た限りデイ、ナイトそれぞれ50~70人程度といったところだろう。選手の賞金額や運営スタッフの数など必要経費も考えると採算が取れているとは到底思えない。YouTubeの視聴者数も再生回数も、各種SNSの影響力もそこまであるとは感じない。

 いまいち盛り上がりに欠けるのは何故だろう? まだ思うように周知できていない部分もあるだろうし、海外との文化の違いもあるだろう。元ナショナルチームの雨谷一樹はこんなことを言っていた。「日本は自転車競技の人口が少ない。ヨーロッパは人も入るし、国も強い」と。

 日本では物心ついた時から、テレビ中継やメディアで目にするのは野球やサッカーが大多数。逆にヨーロッパではツール・ド・フランスやジロ・デ・イタリアなど世界規模のレースの影響もあり、自転車競技が盛んだ。ここ数年でこそ「弱虫ペダル」などの人気漫画の影響でロードレースを始める人は増えたが、トラックレースとなるとハードルは高い。スポーツ観戦が好きなお客さんは自身がプレイできる(プレイしたことのある)スポーツを見に行く傾向にあり、トラックレース(トラック、バンクで自転車に乗る)ということが気軽にできないということも1つの大きな理由だろう。一般の方や、地域の方が専用トラックで走る機会を設けることができれば‥。気軽に見に行ける環境になれば‥。もっとプロの凄さやレースの迫力を肌で感じて貰えることだろう。

本吉慶司記者

2022年1月24日 17時24分

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彼女たちの笑顔は守って欲しい
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参加選手達は皆盛り上げようと協力的だ

 また、レースに出走する選手や、現場の関係者が口を揃えて言っていたのは「業界一丸になって欲しい」ということだ。ある参加選手は「これだから競馬やボートに水をあけられる」と言っていた。現状ではPIST6は現行の競輪と一線を引きたいように感じるが、やっていることは自転車競技法に基づいた「競輪」であって、走っているのは「競輪選手」だ。PIST6の車券がTIPSTARでしか買えないのは残念でならないし、現行競輪のオフィシャルサイトである競輪.jpでPIST6の扱いがないに等しいと言っていいのも悲しい。ファンにとっては凄く不便だし、これでは“競輪を見て興味を持った人がPIST6へ”、逆に“PIST6で興味を持った人が競輪へ”という相乗効果にならないのでは?

 PIST6開幕までに紆余曲折あったり、様々な関係団体の事情があったりするのは分かるが、それはお客さんにとっては関係のないこと。世界を知る雨谷は「自転車競技の大会は、特にロンドンなんかは満員でお客さんが入り切らない。定員オーバーになる。あの光景は忘れない」と語っていただけに、日本でも大勢のファンに見に来て盛り上がって欲しい。寂しい観客席を前にしても、素敵な笑顔で精一杯踊るPIST6DANCERSには頭が下がると同時に、心が痛くなることも多々ある。彼女たちの笑顔を奪って欲しくないし、それを守る責任がPIST6にはあるだろう。
 スポーツ性を強めているゆえに、車券を売らなければ良いのでは? とも思うが、そこは一個人の力ではどうしようもない。PIST6と現行競輪の関係各所が手を組んで、双方を楽しめる未来になることを切に願う。

本吉慶司記者

2022年1月24日 17時24分

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