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2020年5月18日 00時40分

「¥JOY×プロスポーツ記者が選ぶ」極上バトル⑧ ~第59回オールスター競輪・決勝戦~

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稲垣裕之
悔しさをバネに同年の寛仁親王牌で初のGⅠ制覇を果たした
悲願のGⅠ制覇はならず

 平成28年、その頃の近畿勢で次のGⅠ初Vを獲るのは稲垣裕之(京都・86期)であろうと言われていた。そんな稲垣に千載一遇のチャンスが舞い込んできた。8月に松戸競輪場で行われた・第59回オールスター決勝戦で、同郷の大先輩・村上義弘(73期)が稲垣の前を走ると言うのだ。村上は戦法としては多彩だが、この場面で稲垣の前を回るからには先行しかない。番手の稲垣に展開は有利だろう。そんな予想をしていた。

 レースが始まり、周回中で3番手を取っていた村上が青板で上昇した平原康多(埼玉・87期)に合わせて前に出た。京都両者に付ける岩津裕介(岡山・87期)、単騎の中村浩士(千葉・79期)も4番手に付いたしラインは4車、思っていた通りの展開になった。後ろを何回か見た村上は赤板で先行して稲垣は1コーナーから番手まくり。「少し(番手から出るのが)早くないか?」とも思ったが僕は競輪選手ではないし、選手の考えを信じるしかない。そしてゴール前では粘り込む稲垣と3番手を回る岩津のマッチレースで一瞬同時に入ったようにも見えた。どっちなんだ? 勝ったのはどっちなんだ!

 勝ったのは岩津だった。稲垣は2着でわずか4分の1車輪だった。レースを終えて検車場にいると村上の所に稲垣がきた。稲垣は全身を震わせて悔しさをこらえながら、村上に「すみませんでした」みたいなことを言っていたと思う。もちろん、岩津もGⅠ初のタイトルで僕にとっては好きな選手の一人であるから、これはこれで嬉しいのだが、この時は稲垣に獲ってもらいたかった。この年の10月、稲垣は前橋での第25回寬仁親王牌・世界選手権記念トーナメントで念願のGⅠ制覇を成し遂げた。今でも、あのオールスターの悔しさがあったから獲ったGⅠだと信じている。

木村貴宏 記者

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