• 松阪競輪場ミッドナイトGⅢ9/8〜9/10

後記 GⅢ 松阪 09/08

番手を守ってG3初優勝

吉本卓仁

吉本卓仁

決勝優勝写真
決勝優勝写真
決勝優勝写真

 長年九州を引っ張ってきた男が、ようやくつかんだG3初優勝。吉本卓仁は、浮かれることなくその喜びを噛みしめた。号砲と共に、岩津裕介と、小原太樹が同時に飛び出して、スタート争いを制したのは、内枠の利があった岩津。先行一車の立部楓真に、まず有利な態勢が整った。
 「岩津さんがすごい気合で前を取ってくださって、それで自分も気持ちが入った。立部は前が取れたら突っ張りだと思ってたんで、その気持ちを後ろの僕らが引き継がないとなっていう思いも、少しだけありました」
 立部が定石通りに赤板過ぎに突っ張るが、小原も他地区に任された意地がある。2コーナー過ぎに早くも巻き返した小原が猛然と襲い掛かった。合わせてペースを上げた立部が主導権を守り切ったが、出切れなかった小原は吉本に外から競りかける。最終ホームのストレートで一瞬キメられかけた吉本だったが、1コーナーでは内から盛り返して番手を死守。意地でもこの位置は、譲れなかった。
 「正直脚を使ってなかったし、(小原との併走は)きつくはなかった。でも、自分の(番手戦の)経験不足からくる気持ちの弱さで、遅れ気味になった。そんなんじゃだめだと、もう一回盛り返しました」
 打鐘3コーナーで岩津が落車し、競り負けた小原は永澤のアシストで3番手に入り直したものの余力がない。吉本は冷静に後ろの状況を確認しつつ、4コーナーからはゴール線目掛けて踏み込んだ。
 「岩津さんが落車したのは分かってたし、小原君が後ろに入ったのも分かってた。あとは誰が来るかなって感じだったけど、4番(永澤)が見えたので、これ以上かばうのはと。抜かれたらだめなんで、勝ちにいかせてもらいました」
 立部の思いを受け取ってのG3初優勝。これまで何度も九州の先頭で、ラインの勝利に貢献してきた。やっと順番が巡ってきての優勝だが、本人には、そんな恩着せがましい思いはみじんもない。
 「前で頑張ってきたとか、引っ張ってきたとか、そういうふうによく言われるんですけど、あれが僕の勝ち方だった。僕にとっては、あれが自分が勝ちにいく戦法だったんです。それの積み重ねを、先輩方に認めてもらってたんだって思っています。立部は、その時の僕を見ていない世代だし、立部が勝ちにいく仕掛けで良かったんです。でも(立部は)気持ちが入っていた。嬉しかったですね」
 この優勝で、全てが報われたわけではない。慣れ親しんだ9車立てのグレードレースでこそ、結果を出したい。
 「やっぱり、9車立ての記念を獲りたい。今まで何回も取り損ねているんで。自力で獲りたいって思いもあったけど、この歳でそれは厳しい。今できることは、後輩の後ろで仕事をすること。それをやったなかで、記念を獲りたいです」
 ラインの持ち場は変わっても、自分の役割を全うすることに変わりはない。この先も、ラインの勝利のために走っていく。

 永澤剛が小原を迎え入れて、香川雄介は最終バックで5番手。永澤が2センターから外に持ち出して、香川は内のコース取り。ゴール前も最内を踏んで2着に突っ込んだ。
 「永澤君にまくって欲しかったけど、(小原を)迎え入れたので、自分でまくろうかなって思ったけど。余裕はありましたね。最後は永澤君が外を踏んでコースが空いたので、2着まで届きました」

 小原太樹は、他地区に任されての総力戦。できる限りの手は尽くした。
 「(スタートは)取れた気もしたけど、岩津さんが内にいた。こだわってもしょうがないし、車番的に後ろ攻めになることも想定してたので。後ろ攻めなら、早めに押さえに行って、突っ張られたら引いてすぐ行こうと思ってた。出切れなかったけど、あそこで引いてももう着がないし、(吉本の外で)勝負しに行ったんですけど。踏み勝ったかなと思ったら、内から盛り返されちゃいましたね。(永澤に)迎え入れてもらったけど、いっぱいでした。あれで出切れるぐらいのタテ脚を磨かないとだめですね」

Race Playback

レース展開4
 正攻法の位置を確保した立部楓真選手が突っ張り先行。追い上げ策に転じた小原太樹選手を退け番手を守り切った吉本卓仁選手がG3初Vを達成した

レース経過

誘導員 : 上田裕和

 号砲が鳴ると岩津裕介、小原太樹が飛び出すが、最内枠の岩津がスタートを取った。したがって立部楓真-吉本卓仁-岩津-高原仁志のラインが前を固め、小原-永澤剛-香川雄介ラインが後攻めとなった。 青板周回に入ると、2コーナーから小原がゆっくりと踏み上げる。赤板で小原は立部に並びかけたが、立部は突っ張って小原を出させない。一旦5番手に戻った小原は、2コーナーを立ち直ったところから一気にスパートし、これに気付いた立部も踏み込んで応戦する。3コーナーで岩津がバランスを崩して落車するアクシデントが発生。最終ホームは逃げた立部の後ろがイン吉本、アウト小原で競り合いとなり、永澤-香川、高原の順で通過した。2コーナーで吉本が小原を捌いたが、小原は永澤に迎え入れられ、最終バックは立部-吉本、小原-永澤-香川、高原の一本棒となった。2センターで永澤が仕掛けたが、なかなか前との差は詰まらない。直線に入り、逃げる立部を交わした吉本がG3初Vを達成し、ミッドナイトG3では今年3人目の覇者となった。2着は吉本に続いていた小原、2センターから踏み上げた永澤、直線で内に進路を取った香川で横一線となったが、写真判定の結果、香川が小原を微差押さえて2着に入った。

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