S班で待望の初優勝
犬伏湧也
「グランプリも走ってないなかでS班になった。なった以上は、勝たないといけないレースもあった。遅いけど、優勝ができて良かった」
フレームを換えた2日目以降の3走は、すべて先行策。満点の内容にS級S班の犬伏湧也の笑顔が弾けた。
昨年は11月のラストG1、競輪祭を準V。獲得賞金を加算したものの、初めてのグランプリ出場は次点でかなわなかった。がしかし、今年4月にS級S班に繰り上がった。そこから半年、グレード戦線のみでの戦いに身を置いて、ようやく優勝につなげた。
「ずっと苦しかったんで、ちょっとホッとしているところもあります」
内容、結果ともに求められるS級S班の重圧から逃げることなく、真摯に取り組んでいた犬伏は、こう胸をなでおろした。
「(別線の動きを見ながら)落ち着いてできた。一発で(仕掛けて)、ゴウちゃん(佐々木豪)と2人で決められた」
周回中は、後方のポジショニング。6番手の山田庸平が切りに動くが、前受けの金子幸央が突っ張る。山田庸が3番手に下げると、三谷竜生が赤板目がけてフルダッシュ。犬伏の後方からのプレッシャーに別線が動いて、単調な流れにはならず、結果的に犬伏に流れは向いた。
「待たずに三谷さんにスピードをもらいながら、(近畿勢に)付いていけた。(その上を仕掛けた)タイミングも良かったかなと」
地元の牙城を守らんと必死の抵抗を見せる近畿勢をスピードの違いでのみ込んで主導権を奪った。最終ホームでは3番手以降を四国の2人でちぎり、短走路の奈良で、優勝は犬伏と佐々木に絞られた。
「ゴールまでスピード感良くいけた。(佐々木に)抜かれなかったので、ちょっとは成長しているのかと。いつも抜かれているんで、たまには(笑)」
4コーナーで外に持ち出した佐々木だったが、犬伏に体を並べることはできずに半車身詰め寄ってのゴール。S級S班としての初優勝は、犬伏がいつも目標としているラインでのワンツーだった。
「(昨年10月の京王閣以来のG3優勝で)1年もかかった。もっと優勝できるように頑張りたい」
10月の寬仁親王牌、11月の競輪祭。今年のG1も残すところあと2つ。今年も獲得賞金ランクでグランプリが視界に入るところにいる。
「(G1の)そこで結果を出せないとグランプリが見えてこない。来年もSSを続けるためにも、そこで結果を出したい。去年もそういうの(獲得賞金でのグランプリ出場争い)があって嫌だったんで」
ここからはグランプリ出場権をかけたヒリつくような争いも、さらにヒートアップ。この優勝が犬伏に勢いを与えることは間違いない。
打鐘2センターでのあおりもあった佐々木豪は、奈良の短い直線勝負にかけたが2着。記念初Vはお預けになった。
「犬伏君的には、三谷さんの動きが助かったと思う。ダッシュの立ち上げを無風で行けたと。犬伏君が(仕掛けて)いつ行くかわからなくて、後ろでカンカンカンっていた。それで付いてはいったけど、(三谷に)からまれて口が空いてキツかった。(最終)4コーナー勝負でと思ったけど、犬伏君の踏み直しがすごかったし強かった」
3番手で大きく離れた三谷の余力を見極めた山田久徳は、最終2コーナー過ぎに自力に転じて四国コンビを追ったが3着まで。
「あの展開で三谷君がよく行ってくれました。金子君も踏んでいたし、出るのに脚を使ったと思う。止めにいったけど、(犬伏の)スピードがすごかったです。判断が難しかったし、僕の失敗でした。(最終)ホームで(切り替えて)行ったら、ギリギリ間に合ったのかな。タラレバですけど…、悔しいですね」