G3は今年初優勝
脇本雄太
今年最初のG1、2月の全日本選抜を制して史上初のグランプリスラムを成し遂げた脇本雄太は、6月の高松宮記念杯で今年2度目となるG1優勝。しかしながら、G3でのV奪取は、昨年9月の向日町記念以来。それだけに開口一番、こう振り返った。
「(記念優勝は)かなり久しぶりの感じですね」
決勝では、まさかの単騎戦を余儀なくされた。眞杉匠は南関勢とタッグを組み、新田祐大の前後を菅田壱道、守澤太志が務める北日本の強力な布陣。それだけに泰然自若。どっしりと後方で、前の8人を視界に入れた。
「(レースは)なにも考えずに9番手で構えて、なんかしらの動きがあったら反応してアクションを起こそうと思っていた」
前受けの眞杉が上昇した大川龍二を阻んで突っ張る。そこを今度は菅田が間髪を入れずに仕掛ける。打鐘3コーナーで菅田が主導権を奪うと、眞杉は番手に飛び付いて隊列が凝縮される。それでも脇本は、前の中四国勢の動きを見ながらじっと待った。
「(最終ホームで)大川が外に(車を)外したのを見て、その時には(自分も)外に行こうとした。落車を避けるので金網に近いところまで行ってしまって、(前まで)遠くなってしまった。でも、(外を踏まず)そのままいたら落車していたと」
眞杉に弾かれた新田が、最終1センター過ぎに落車。大川が乗り上げて、小倉竜二は内に避ける。最後方にいた脇本は、大外を回ってアクシデントに巻き込まれずには済んだものの、前の6人には大きく距離が空いた。脇本だけが中継画面からも外れて、誰もが圏外に陥ったかに思われた。
「無我夢中で踏んでいた。前が遠いのもあったので、詰めてその勢いでと。前の感じはわからなかったけど、気がつけば伸びていた感じです」
バック過ぎに前団に追いつくと、そこからは一人だけ別次元。ほかが止まって見える上がり10秒9のまくりで一気にのみ込んだ。
「(今シリーズは)体の悪影響(持病の腰痛)はないかなと思ったけど、気持ちの面が弱かった。(地元の福井がバンク改修で使えず)少なくともいい影響が出ることはないので、悪い影響が出ないようにしたい。(次の寬仁親王牌)調子を落とさないように頑張りたい」
次回の寬仁親王牌、11月の競輪祭を獲っての年間4度のG1優勝の期待も膨らむ今年初のG3制覇。自身が持つギアを年末に向けて、さらに1段階、2段階と上げていく。
2位入線の眞杉は失格。ラインの和田真久留、和田健太郎が2、3着に繰り上がったが、ともに複雑な表情。番手で難しい判断を迫られた和田真が振り返る。
「打鐘までは(ラインの組み立ては)完ぺきでしたね。眞杉君は優勝する選手ですし、突っ張る、粘るは彼の判断だった。自分は守澤(太志)さんが当たる位置で併走する位置が良くなかった。(守澤に当たるのを最終)1コーナーまで待って、勝てると思ったら、眞杉君も当たりにいってガシャン(って落車)でした。眞杉君を迎え入れたけど、小倉さんが来てて、(眞杉の後ろを)取り切れなかった。追い込みとして技量不足でした」
眞杉ライン3番手の和田健太郎は、前の和田真の動きを余力を見極めて直線は外を追い込んだ。
「(眞杉が)大川君を突っ張って、(大川が)北日本勢に降りると(眞杉は)先行含みだし、あとは菅田君がどこで来るかだった。それを(眞杉が)突っ張るか、新田君、守澤君のところで(粘るか)って感じでした。(和田)真久留が守澤君に降りられて、内を走っていた。そこで引くのかどうかでした。真久留が小倉さんのところに入っていけていれば面白かったですけど。それでも脇本君の優勝は変わらなかったと思う」